null出版者の観測

IT先端分野を中心に、言語、編集、図書館など

面倒なことから逃げない研究

新しいお勤めの仕事を、もう2週間も続けられました。思いがけず相性が良くて、ストレスゼロでやってます。

今回は、ある機関の特任研究員という立場です。「ドキュメンテーションの効率化の研究をしろ」くらいしか言われなかったので、思いつくマニフェストを作って、あとは研究室でのんびりです。

こんな感じの、言葉じりだけは意識高めなことを掲げてみました。

  1. 千年後においても、そのときのシステムで再現可能であるテキスト構造の研究
  2. コミュニケーション過程において自動的に構造化テキストが蓄積される技術の研究
  3. 2.によるナレッジベースからデータ駆動によって目的に応じた文書が自動的に生成される研究

わかりやすく言うと、目的パラメータを与えれば、過去のコミュニケーションDBから、公文書のように整った様式の文書が手元に出力される、ロボットの開発です*1

なぜこんな研究をするのか?

それは、小説のようにパッションに駆られる動機がない限り、誰も文書なんて書きたくないと思っている、と思ったからです。

面倒なことをやらずに済ませるためには、その1,000倍の面倒なことに取り組む、というのが人の性ですからね。

まあ、研究がうまくいく可能性は、「千年先でも流通可能な構造化ドキュメンテーション」の部分くらいで、あとは、運が良ければ成果が出るかもしれません。

きっとポスドクって*2、こういう暮らしをしているんだろうなあ。あまり社会の役には、立ちそうにはないなあ。でも、楽しいから、いいんじゃないのか?

千年にこだわったのは、このブログのはじまりが「千年旅行」という、千年以上旅行しつづける業をつづったものだったからです。くわえて、源氏物語がちょうど千年前に書かれた物語で、同じ研究所に数理的な手法で源氏物語の解析をしている先生がいたからです。

まあ、研究のようなことは、あまり結果にきなきなせずに、やりたいものですね。

*1:しかも、依存性を極力排除することで、1,000年後も処理可能であるはずの

*2:わたしは博士課程とったわけじゃないので、想像でしかわからない

3日働いて4日休む

北杜市からも鎌倉からも、同じような時間でリーチする場所に、勤めはじめました。こんどの仕事は、データサイエンスに関係する研究です。勤務は火・水・木の3日間なので、火と水の2泊だけ勤務地近くに泊まれば、合理的な通勤ができます。

お山の、田んぼに水を引くときの遊水池。こういう風景が大好きなんだあ

つまり、車移動で、鎌倉→勤務地2泊→北杜市→勤務地2泊→鎌倉、のような隔週ルーティングです。5千円/泊のビジホ2泊でも、十分通勤コストに見合いますが、民泊をさらにシェアすると、宿泊コストは2千円/泊以下にすることができます。

わたしの場合、全寮制の高校生が、土曜の夜だけは寮に泊まれないのに*1、親は英国にいて、国内には帰る家のない子がいたので、その人が土曜1泊、わたしが火・水の週2泊の使用で、部屋を借りることに成功しました。

勤務先には車と自転車を停めっぱなしにできるので*2、勤務先と民泊の間のラスト1マイルは、自転車でシャトルします。

こうしたことは、大家が柔軟な考えの持ち主であることが前提ですが、所有物件を民泊でも運用しようとしている時点で、すでに積極的なので、条件が揃うと、比較的にすんなりと話はまとまるものです。

というわけで、週末が金曜~月曜に拡大しました。

このライフスタイルの最大のメリットは、平日動けることです。そして、フリーランスの仕事の多くは、平日にしかできないことがとても多いのです*3

喫緊の課題は、IT分野の書籍3冊の編集です。そのうち1冊はDeep Learningに関する大著で800頁もあります。出版まで9ヵ月くらいかかるので、だらだらとしつつも集中力を維持できる、この勤務/自由体制は、よく最適化されたものだと思っています。

*1:日曜は家にいて教会に行けということらしい

*2:勤務先が通勤に寛容であることも重要です

*3:取引先とのミーティング、資金オペ、行政手続き、ただ単になにもしないことも含めて

建築とかばん

車や建築や機械がさらっと好きなのは、そこに造形の美があるからで、人物や風景の自然美とは、またちょっとちがうんだよね。

そのような中、北杜市で、愛用しているかばん作家さんのアトリエが完成したので、見にいきました。もとの建築物は、大企業の社宅で、頑丈ではあるけれど、面白みのない建築でしたよ。

YOHNとは琉球語なら夜。陰陽交わるナイアラートテプなクラフト感があってます


わっ! それが、沖縄の陸屋根の鉄筋コンクリート民家のように、リノベーションされてるー。

工房も見せてもらいましたが、見たことのない質感の帆布や、近づくことさえ恐れる質量の工業ミシンが整然と配列されていて、ここがプロフェッショナルだけに使用を許された現場であることが、ひしひしと伝わってきます。

すごいなあ。

何かを極めることとは、並のことではないんだな。

この建築は、設計も施工も、ほぼそのかばん作家さんの手によるセルフリノベーションです。

サイズこそちがえど、美と造形と技術においては、建築も、かばんも同じ地平にいることがよくわかります。

yohn.biz

タコピーのアナグラムやカサエル符号化

私生活において、恋愛小説と家族小説が好物のわたしは、とくに擬似家族の物語のような、メタフィクションが大好きです。SPY×Familyのアーニャかわいい! そして事実、6歳(小学1年生)の女の子の思考や行動は、その通りなので、多少チート能力があるからといって、不自然な家族に見せないのが、この物語の優れた部分です。

ところで、パリピ孔明は、メタフィクションとしてどうか? まあ、イケるかな。

その一方、どす黒い家族関係をハッピーに昇華させる物語として、次のマンガが、かなり面白かったです。


もちろん、わたし好みのメタ作法あふれる作風です。

しょっぱなから、ハッピー星人がハッピーフルーツを食べてしまったせいで*1、地球に追放されるとか、そういうヤツだとわかるんですが、暗喩や符号化の強度も強く、考察沼にハマって抜け出せなくなりそうだ。

ハマる事例⇒ タコピーの原罪のネタバレと考察 | 円周率近似値の日に生まれて理系じゃないわけないだろ! - knifeのblog

本題は、家族、友情、勇気というジャンプ文化そのものです。その反逆としての符号化なので、圧制下のロシア映画のような、重層的な構造になっています。

素直に読めばジャンプなので、主人公が小学4年生という設定でもあるし、これはぜひ昨年度勤めていた学校図書館に寄贈しておきましょう。

それから、今、進捗している編集の仕事とは別に、明日5/1からお勤めすることになりました。

今度は、データサイエンスの応用研究のような仕事です。出勤するのは5/10からなので、その頃に塩梅を書きましょう。

*1:作中ではハッピー星の大時計の時間を狂わせた設定

おやすみプンプント

ご趣味はなんですか? と問われたら、それはアニメと車です。と即答できるほどに、ロンリーかつソリチュードな毎日を過ごしているわけだが、1ヵ月以上前に買ったまま、放置していたフィアット グランデプントを、ようやく受け取りに行きました。

この車は、普通ですなー。

うん。フツーフツー。ぜんぜんおかしくないです。

といった感じで、ユニクロ的に安くて誰にでも似合い必要十分である点において、この車の異次元感というのは、つきぬけています。

写真では地味なコンパクトカーに見える


しかし実車を見てみると、何かが違っているのは明らかで、その違いとは、徹底的にディティールにこだわったデザイン力なのでしょう。

天方向に対して、一般的なコンパクトカーよりも左右2mm程度絞ったルーフ、何かを反射させなければ気づかないプレスライン、鼻先2.5mの適切な車間距離に消失点が見える透視図法的作法など、分析的に見れば見るほど、凄みのあるデザインであることを感じます。

わずかなプレスラインの違いで陰影をつける表現は、90年代のシトロエンにも似ている


この車のデザインは、イタルデザイン社によるもので、トップはG. ジウジアーロという著名な工業デザイナーさんです。

日本車においても、いすゞ117クーペや、スズキフロンテクーペなど、古いとがった車をデザインしています。

ところで、運転した感じは、言葉どおりいたってフツーなのですが、シートの出来がこれまたすばらしく極上です。沈み込まず、角張らず、しかも体を支えるように包み込むので、運転したあとの疲れが残りません。

少しいいホテルに置いてある、イタリア製のソファと同じ感じの座り心地がします。これ、錯覚じゃないよ*1

*1:星野リゾートになる前の小淵沢のホテルで体験